東京家庭裁判所八王子支部 平成8年(少)1164号・平8年(少)1803号・平9年(少)663号・平9年(少)1571号・平9年(少)50735号
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
第1 Dと共謀の上、平成8年4月19日午前1時ころ、東京都立川市○○町×丁目×番地の×○○団地××号棟自転車置場横から、E所有の第一種原動機付自転車(立川市×××××号)1台(時価30000円相当)を窃取し
第2(一) 同年8月6日午後10時ころ、同市○□町×丁目××番地所在○○林内において、F(当時I7歳)に対し、同人の顔面を頭突きしたり、顔面等を手拳で殴打したり、足蹴にするなどの暴行を加え、よって、同人に対し、全治約1週間を要する左眼部・後頭部・左頸部打撲、擦過傷の傷害を負わせ
(二) 前記日時、場所において、前記暴行によって自己の洋服が汚れたことに因縁をつけ、前記Fに対し、「クリーニング代をよこせ」「金がないならポケベルをよこせ」などと申し向けて金品の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ、その身体等にさらにいかなる危害を加えかねない気勢を示して同人を脅迫して畏怖させ、即時同所において、同人からポケットベル1個(時価3000円相当)を交付させてこれを喝取し
第3 平成9年4月20日午前4時25分ころ、東京都昭島市○○町××番地JR○○駅北口西側階段踊り場において、窃盗被疑事件の被疑者Gを警視庁○○警察署に任意同行しようとしていた同署警察官○○に対し、前記Gを奪還するべく「馬鹿野郎、何で捕まえるんだ。」などと怒号しながら、同警察官の制服の胸元を両手で掴んで揺さぶりながら前に引き倒そうとするなどの暴行を加え、もって、同警察官の職務の執行を妨害し
第4(一) 公安委員会の運転免許を受けないで、同年6月25日午後0時30分ころ、東京都青梅市○○×丁目××番地先道路において、普通乗用自動車を運転し
(二) 業務として前記日時場所において、前記事両を運転し、□□方面から□△方面に向かい時速約50キロメートルの速度で進行するにあたり、進路前方は右に湾曲していたのであるから、このような場合、自動車運転者としては、ハンドル、ブレーキ等を的確に操作して安全に進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、車内で運転を交代しようとした同乗者の動きに気を取られ、前方に対する注視を欠いたまま漫然進行した過失により、自車を進路左路外の広告鉄柱等に衝突させ、よって、同乗者のH(当時17歳)に対し、加療約37日間を要する右肋骨骨折、外傷性気胸、顔面打撲、右肘部挫傷の傷害、同I(当時17歳)に対し、加療約25日間を要する顔面打撲等の傷害、同C(当時17歳)に対し、加療約8日間を要する胸部打撲等の傷害、同A(当時17歳)に対し、加療約1日間を要する顔面外傷の傷害、同J(当時17歳)に対し、加療1日間を要する顔面外傷の傷害をそれぞれ負わせ
(三) 第4の(二)の記載のとおり、自己の運転する車両により、前記Hらに傷害を負わせる交通事故を起こしたのに、直ちに負傷者を救護するなどの必要な措置を講ぜず、かつ、前記事故の発生目時、場所等法律に定める事項を直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった
第5 同月28日午後4時30分ころ、業務として原動機付自転車を運転し、時速約30ないし40キロメートルの速度で、東京都あきる野市○○××番地先の信号機により交通整理の行われている交差点を△△方面から△□方面に向け直進しようとしたが、このような場合、運転者としては、前方を注視し、対面信号機の表示する信号を確認し、これに従って進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、自己の道路交通法違反を現認した警察官から追尾されていたことから後方に気を取られ、対面信号が赤色を表示しているのに気づかず、停止位置で停止することなく、漫然前記速度のまま同交差点内に進入した過失により、折から同交差点の右方から信号に従って進行してきたK運転の普通乗用自動車に自車前部を衝突させ、その衝撃により、自車の同乗者L(当時16歳)に対し、全治約2週間を要する右大腿打撲、頭部打撲等の傷害を負わせた
第6 Mと共謀の上、通行人から金員を喝取することを企て、同年8月30日午後0時50分ころ、東京都武蔵村山市○○×丁目×番地○○において、O(当時22歳)に対し、こもごも「目立った格好してるな」「指輪18金、見せて」などと申し向けて暗に指輪の交付を要求し、その要求に応じなければその身体等に危害を加えるような気勢を示して同人を畏怖させ、即時同所において、同人から指輪1個(時価1万円相当)の交付を受け、さらに同時刻ころ、同人を同市○□××番地の×先空地内に連れ込み、同所において、「財布見せて、取ったりしないから」「いいから見せろ」等と語気鋭く申し向けて財布の交付を要求し、その要求に応じなければ、その身体等に危害を加えるような気勢を示して同人を畏怖させ、よって、即時同所において、同人から現金約2万3000円及び財布1個(時価3000円相当)の交付を受けて、それぞれ喝取した
ものである。
(法令の適用)
第1につき 刑法60条、235条
第2の(一)につき 刑法204条
第2の(二)及び第6につき 刑法249条1項(第6につき刑法60条)
第3につき 刑法95条1項
第4の(一)につき 道路交通法118条1項1号、64条
第4の(二)につき 刑法211条前段
第4の(三)のうち 救護義務違反につき 道路交通法117条、72条1項前段
報告義務違反につき 道路交通法119条1項10号、72条1項後段
第5につき 刑法211条前段
(処遇の理由)
1 少年は、幼少時から実父に厳しく養育され、激しい体罰を受けることも度々であったことから、父親に対して反発を抱き、また、学校においても学業意欲に乏しく、成績不振であったことから、家庭や学校に居場所を見出せずに、受容感を求めて中学校入学ころから不良仲間と交遊し、恐喝等の問題行動を起こすようになった。そして、平成7年4月には高校に進学したが、間もなく不登校となり、不良仲間と交遊し、暴走族「○○」を結成して、夜遊びや恐喝、喧嘩などの問題行動を繰り返し、そのような中で、判示第1及び第2の非行を犯し、平成8年12月18日、当庁において、調査官の試験観察に付された。
少年は、そのころ父親との確執から自宅を出て単身居住し、塗装工として稼働していたが、前記決定後間もなく、前件非行による休業のことで先輩から文句を言われたことで勤務先を辞め、再び不良仲間と交遊し徒遊がちな生活を送る中で、判示第3の非行を犯し、平成9年5月16日、当庁において、試験観察(補導委託)に付された。
しかるに、少年は、間もなく対人関係の悪化から補導委託先を退去し、母方祖父母宅で引き続き試験観察を続行することとなったが、自由な時間が出来るとすぐに不良仲間との交遊を再開し、次々と第4ないし第6の非行を犯すに至ったものである。
2 本件各非行の内容は恐喝、窃盗、傷害、公務執行妨害、業務上過失傷害、道路交通法違反と多岐にわたり、非行件数も多く、少年の規範意識の欠如は顕著であり、非行性は相当深化していることが窺える。
そして、少年は、審判廷において「自分は人を殴ることに慣れていたし、殴ることがそんなに悪いとは思っていなかった。友人同士では喧嘩してもいいし、手が出るのは当たり前だ。」と述べるなど、幼少時から父親に激しい体罰を受けた影響からか、暴力に対して肯定的であり、また、判示第3の公務執行妨害は、深夜、交番に大勢の仲間と押し掛け、仲間の一人が交番内からぬいぐるみを持ち出したことで警察官に連行されそうになったので、これを阻止しようと敢行したものであるが、これについても「警察官に対して、あまり迷惑だとは思わなかったし、めいぐるみの持ち出しもそれほど悪いとは思わなかった。警察官は弱い者いじめをするし、見るだけで腹が立つ。」などと供述しており、価値観の偏りは大きい。
加えて、少年は、遊興志向が強く、欲求不満耐性に乏しいうえ、対人不信感が強く、物事を被害的に捉えがちで、精神的にも未熟で感情統制が悪いため、対人トラブルが絶えず、そのため、職場にも安定出来ない。
3 当初から、かかる少年の資質面の問題性の大きさは窺えたものの、初回係属ということもあり、少年に対しては、まず、試験観察に付して、受容的な環境の許で、対人不信感を取り除き、健全な価値観や社会常識を習得するべく指導を行った。しかるに、少年は、再三にわたる指導にもかかわらず、試験観察中も委託先や職場で対人トラブルを頻発させて生活が安定せず、相変わらず不良仲間との交遊を続けるなど、改善が見られない。また、少年と実父との間には依然確執があり、実母は少年に甘く、両親の監護能力に期待できない現状では、もはや少年に対しては、社会内における処遇は困難であり、少年の更生のためには、施設に収容して、健全な価値観を身に付けさせるべく矯正教育を行うことが相当である。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。